Liam's Page

天辰家の猫 リアムのひとりごと * その 20

暖かくなって春めいてきた今日この頃。我が家の様子がどうも変なのだ。
普段はきれいに片付いているはずの部屋や廊下のあちこちに、大小さまざまのダンボール箱や、パチンパチンと音がするプラスチックのシートや、クシャクシャと音がするビニール(どちらも大好き)が無造作におかれ、レコードやCDが山積みになり始めている。
あれぇ、どうしちゃったんだ?!家中がご主人様の仕事部屋みたいになってきたぞ。

もともとぼくたち猫の目はあまり良くないと言われている。速く動く物には敏感だが、普段の視力は人間の10分の1くらいなんだそうだ。だから夜なんて、ほぼ真っ暗な世界の中を生きているわけで、それでも物にぶつからずに、細い場所でも器用に歩けるのは、目に見えるもの以上に、音やにおいや感覚に頼っているからだ。だから家具の位置がビミョーに変わったり、それまでになかったものが置かれていたりすると、どうにも感覚が鈍ってしまう。

「あれ?いつもの通り道になんだろ、これ?」 クンクンと鼻をくっつけてにおいを確認。
「ん?昔の家のにおいがする。ちょっと埃っぽいぞ」 どうやらご主人様が実家から運んできた古い雑誌や本のようだ。
「こんなのがまだ残ってたんだなぁ。これは30年前のROLLING STONEだぞ、リアム。」
ご主人様は大事そうに埃を払うと、嬉しそうにページをめくり始めた。実家でも無造作に山積みにされていたのは知っているが、中を見るのは初めて。こうして埃を払われ、いったんダンボールにしまわれ、再び山積みにされるのかな?

そう、我が家は5年ぶりの引越しの準備に大忙しなのだ。
これまで倉庫代わりにさせてもらっていた実家も引き払うため、大量のレコード、CD、本関係をいよいよ整理しなければならなくなった。こんなことでもない限り、片付かないから良い機会だ、と言いながら、ようやく整理にとりかかり始めたご主人様だったが、やはりという言うべきか、捨てきれない物ばかり、次から次へと出てくる。
「これっていつの写真だろう。リアム、見たことなかっただろ?」
「よくとってあったなぁ、このレコード・・・」
しまいには、学生時代に使ったモンゴル語の辞書まで出てきた。
片付けの手を休め、黄ばんだページを一枚ずつ丁寧にめくるうちに、息子と同じくらいの年齢の自分が書き残した落書きをみつけ、苦笑い。
懐かしさについ、タバコを一服。ぷっは~~~。
こんな調子だから、作業はなかなかはかどらない。

それでも引越しの日は日一日と近づいてくる。
部屋を占拠し始めたダンボールの箱、箱、箱。
その間を縫うように新たなルートを確保し、山の上に飛び乗ったり、飛び降りたり・・・と半分冒険気分のぼくだけど、やっぱりなんとなく落ち着かない。
そんな生活もあと少し。来月には、ぼくも新しい暮らしを始めているはずだ。どんなウチなのかな?「窓の外は海だよ」とご主人様は言ってたけど。期待と不安が半分ずつ。詳しい引越しのレポートはまた来月にするね!

(次号に続く)
(2006. 3)